OU812?

 久しぶりに、残業なしで帰途に着く。
 夏至を過ぎ、見上げた空は未だ陽の傾くようにも見えず、雨上がりの洗われた空気越しの空色が、水田に鮮やかに映る。眼下に広がる田園地帯は整えられた畦に縁取られ、まるで無数の空の絵を並べたみたいだ。



 いい加減仕事が空いてきてもいい頃だろうと思っていたがなかなかそういうことにもならず、たとえそうなったとしてもVAN HALENを聴いたり観たりするのに忙しく。

 唯一の救いは、仕事上最もやり取りの多い本社のSEがヘヴィメタ野郎だということ。年下のクセに妙に世慣れているところも面白い。前職は、音楽雑誌(HR/HM系)のライターだというところも好都合だ。取材で出会った面白い話をあれこれ聞かせてくれる。ってゆーか仕事しろよ。

 「こないだのライブはエディーズギター使ったんだ〜。しかもサイン入り」
 「なんでそんなの持ってんだよフザケんな!
  触らせろ!エディの指紋に触らせろォォォ!!」

 合言葉は「Rock & Roll」だ。
 おかげで、殺伐としがちな機械仕事に潤いが。初対面ではアキバ系だと勘違いしていた私を許せ。



 最近、仕事で英語を使うことが多い。会社がちゃんと外資らしくしようと(今更)動き始めているせいもあるが、外国人社員も増えているのでコミュニケーションの機会が多くなってきている。

 英語なんて中高で勉強した以外はまともに使った覚えも無く、多くの人がそうであるように、読んで理解は出来るが書いたり話したりすることが苦手だと思っていた。けれど、やり始めると意外と出てくるものだ。学校で習ったことも、水脈としてはちゃんと自分の中に存在している。後は、それを掘り返しす訓練をするだけだ。すなわち、実践あるのみ。

 学校で習ったことは、ちゃんと役に立つのだ。
 …と、昔の自分に言ってやりたい。

 すべてが、とは言わないけれど、学校の勉強は水脈を作ることなのだ。いつか大人になって、掘り返すための。

 大人になってみてわかることって、やっぱりたくさんあるな。
 学校は窓ガラスを割るためだけにあるんじゃないんだぜ(今時するかよ)。