どうせ明日はある

Hortum Veritatis

久しぶりにやっつけ仕事を見破られ、肩を竦めてやり直す羽目になった。 しかし、相手の戸惑った様子に、要領の良さに溺れて相手の期待を裏切ってしまったことに気づく。 珍しく仕事が原因で落ち込んでいるのは、そのことが堪えているからだろう。少なくとも…

往きて還るもの

夏期休暇中の一週間に溜まった仕事を解消するのにどれほどかかるかと思っていたら、拍子抜けするほどあっさり片付いてしまった。相変わらず仕事はえーなオレ。 結局、休みが明けて二日目にはすっかり通常通りだ。 とは言うものの、避暑地の快適さに慣れかけ…

Caeca est

気温はそれほど高くないと思っていても、湿気がひどい。 生暖かい霧の中を歩くような感覚。こういう気候は、体力を消耗する。 今週から、一週間の夏期休暇に入る。 サービス業であるがゆえにカレンダー通りに会社はやっているが、夏期休暇は自分で決めていい…

Why should we wish to live longer?

夕風のやわらかさに、早くも九月の気配が混じる。 盛りの時に終わることを意識させられるのは少々やるせない気分になるが、溺れぬようにとの戒めかとでも思えば、ある種の慎みを感じなくもない。 日本の四季は、そんなふうに巡るように思う。 夏の盛りに勤労…

子供のための物語

大人になると、夏が味気ないものになっていくのだなぁ、と思う。 いつも空調の聞いた場所にいて暑さもろくに感じないし、食べ物にもあまり変化は無いし、休暇も短い。夏を堪能する機会が、子供の頃に比べると極端に少ないのだ。 同じ環境で仕事をしている大…

君は僕とは違ってた

会社帰りに難波まで歩いて、ついでに髪を切ってきた。 伸ばそうか短くしようか迷っていたが、ようやく肩まで届いてしまったので、長さは変えずに梳いて軽くしてもらった。 襟元の暑苦しさは解消されたが、なんだか子供っぽくなってしまった。 周期的に肉付き…

あかい花

自転車を漕いで空を見上げると、西の雲が白金に光っていた。 夕暮れは、こんな色にもなるのだな。 西方浄土からの来迎図を思い出す。金色の雲に包まれて天より降る姿は、あながち出鱈目なんかじゃないのだろう。 少なくとも、その中に如来の姿を求めた人々が…

午後の曳航

朝から真夏日。 昨夜珍しく酒を飲んで遅く帰ってきたため、惰眠を貪ってやろうと思っていたのだが、あまりの暑さに断念。喘息が全快しているとは言いがたいのでクーラーもつけられず、仕方なく起き出してシャワーを浴びた。汗を流すと、少し涼しくなる。 予…

水底の楽土

昨日処方を変えてもらった薬が、功を奏したらしい。今日は、小康状態を保っている。このまま出勤してまた酷くなったりしないよう、今日は丸々休みを取った。これで治してしまおう。 時折出る発作のような咳を宥めすかしながら、いつも出社している時間まで横…

Call My Name

濃い緑の中に、筆先を落としたような白い点。梢にとまる、純白の大きな水鳥だった。 その姿の孤高に、しばし見とれる。 週末から持病のアレルギー性喘息が出て、昨日は体調の悪いまま出勤したら強制送還され、今日は大事をとって午後から出勤するも、顔を見…

僕の目を見て、僕に触れて。

暴力は、複雑さに対する耐性を持たない者の怠慢だなぁ、と思う。 朝、NHKジュニアスペシャルの再放送で、中世のエルサレムで実現したイスラム教・キリスト教のそれぞれに属する二人の王の結んだ和平条約を取り上げていた。 当時のエルサレムはアイユーブ朝ア…

箱舟

一日、雨の音を聞いていた。 近畿地方南部は、一時大雨警報が発令されるほどの土砂降り。屋根を叩く雨音がまるでダイナモの唸りのようで、少し恐れて毛布に包まっていた。 真夏日と肌寒い日とが交互にやってきて、おかげでアレルギー性の気管支炎に。先週か…

そして僕たちは

早く帰ろうと思って特急に乗ったら、人身事故で一時間半も車内で缶詰状態。指定席なので窮屈な思いをせずに済んだが、腹が減って気を失いそうだった。こんなことなら、食べてから帰れば良かった。 事故は線路内に侵入した何者かとの接触によるものだったらし…

これが、さいごの食物。

生理不順からくる体調不良と夏バテのあわせ技でダウンして、ひどい偏頭痛と貧血。 次は絶対男に生まれ変わってやる(キリスト教徒ハ輪廻シナイヨ)、との誓いを胸に、会社を休むことにした。 こうなるといつもの悪い癖で、すぐ食欲をなくす。 食べるものを想…

地上に別れを

空梅雨かと思っていたら、突然の土砂降り。 ここ数年、気候のバランスは目に見えて崩れてきている。 それでも、いろいろな災害や変化を乗り越えて、人類は生き延びていくんだろうな。こんなに生存圏の広い生物は、他にいない。 総体としては、この上なく強い…

On Earth as it is in Heaven

通院のために早退する。 16時を回ったくらいではまだまだ日は高く、すっかり夏の日差しとなった陽光の下で見る街は、不思議と眠たそうに見える。電車の窓から見える景色が鮮やかで、ほとんど乗客がいないのをいいことに窓にへばりつく。 視界に広がる緑の…

To love somebody equally

天気がいいのであちこち出歩くつもりだったけれど、暑かったので結局家でだらだら過ごす。 いやまぁ、たまにはこんな休日も必要だ。 私の部屋には風の通り道があって、そこにクッションを積んで横になる。 ケルト音楽を聴きながら、風に膨らむカーテンを眺め…

葬列の街

朝から、予報どおりの快晴。 洗濯をしながら、VAN HALENを聴いてテンションを上げてみる。エディのギターは最高だ。 ファーストアルバムでぶちかましたEruption(暗闇の爆撃)は、まるでバッハのオルガン曲。彼の領域がクラシックなら、間違いなくヴィルトゥ…

影は溢れ

街に人が多いと思ったら、給料日の金曜日。 高温多湿で膨張したような上空に、人々のバイタリティが渦を巻く。 今日は一日機械仕事で、しかも待機時間が長くて疲れた。 読み込みを待っている間、近くの席の同僚と世間話をする。あまり社内の人と交流を持たな…

OU812?

久しぶりに、残業なしで帰途に着く。 夏至を過ぎ、見上げた空は未だ陽の傾くようにも見えず、雨上がりの洗われた空気越しの空色が、水田に鮮やかに映る。眼下に広がる田園地帯は整えられた畦に縁取られ、まるで無数の空の絵を並べたみたいだ。 いい加減仕事…

凍れる音楽

金曜日は、会社のオネーサンと二人で紀伊山地の龍神温泉というところに行ってきた。日本三大美人の湯と謳われる、山深い隠れ里。 数ヶ月後には結婚して故郷の北海道に戻る彼女は、このところ休日ごとに近畿各地の「行き残し」を巡っている。私もしばしば、お…

神に非ずと

二週間ほどの間、寝るためだけに家に帰り気がつけばまた会社で仕事をしている、という学会前の大学院生のような生活が続いた。忙しすぎる。 仕事もようやく落ち着き、来週からは何とか陽のあるうちに帰れそうだ。とはいっても、夏至の近い時季。日没が遅いだ…

地上に別れを

ここ数日の気温の変化に身体がついていかず、久しぶりにアレルギーが出て発熱した。喘息の兆候だ。 ぐるっと今日のスケジュールに頭を巡らすも、研修と会議と懇親会。 休んでやることにした。 駅からマイクロバスに乗って、市民病院に。 去年郊外に移転した…

緑の森

何も感じられなくなるくらい、忙しい日が続く。 効率的に生きるためには、感情活動が最小限に抑えられるものなのだとおもう。実際、この二週間ばかり、何をしたかほとんど覚えていない。仕事と、仕事の成果が累積されてゆくばかりだ。 せめてもと、天気の良…

花咲ける午後

今年のGWは、5/2の出勤日を挟んで前半後半をそれぞれ楽しんだ。 前半は、恋人と奈良の古寺巡り。お決まりのコースではあるが、季節により時刻により、まったく違う様相が見られる。何度行っても良い。 人気の絶えた、夕刻の室生寺や多武峰。斜陽に眩む、新緑…

風と光と貴方の王国

金曜日、家路の途中に見上げた空に、十四夜の月が輝くのをみた。 遮るものの無い夜空に月は皓々と高く輝き、漣のように薄く寄り添う雲だけが、鱗翅のように光を受ける。月は、夜の海を渡る舟のようだった。 月を見たのも、久しぶりな気がする。 このところ私…

世界の根拠

その、静謐を愛す。 小雨の降る中、おばあさんと、共に歩くイヌとすれ違った。 白いイヌは、車通りの激しい国道の脇を先に立ち、おばあさんを振り返りながら歩調を合わせてゆっくりと歩く。 その、おばあさんを見守る眼差しの優しさに、なんだかひどく胸を打…

花散らし

金曜の晩、残業を終えて10時過ぎに家に辿り着くと、恋人から電話がかかってきた。私たちの大学院時代に、それぞれの研究室の助手を務めていた二人と、夜桜を見に来ているのだとか。 「今から迎えに行くから。」 「…って、えー!?」 大学院時代も、こうやっ…

Pacem In Terris

桜が咲き始めたと思ったら、雨が降ってきた。 まだ散る心配をする必要は無いが、花を見に出られないのが残念だ。 未明、ローマ法王ヨハネ・パウロ二世が死去した。 享年84歳。初めて共産圏から選出された、スラブ系の教皇。 国際社会における政治的影響力も…

ボクはボクを裏切らない

昨日は復活祭だった。 この日を過ぎると、本格的に春になる。 そしてこの春は、別離が多い春だ。 長年私の心の片隅に静かな楽園を形成してくれていた、スペイン人の老神父が、帰国することになった。 数年前に遠くの教会に異動になり、以来年に一度くらい何…