あかい花


 自転車を漕いで空を見上げると、西の雲が白金に光っていた。
 夕暮れは、こんな色にもなるのだな。

 西方浄土からの来迎図を思い出す。金色の雲に包まれて天より降る姿は、あながち出鱈目なんかじゃないのだろう。
 少なくとも、その中に如来の姿を求めた人々があったのだ。仏が降るなら斯くの如しあれかしと、人の想像力がそれを見出したのだ。あの光の中から。

 やがて、逢魔が刻。
 吹く夕風や、鼻先を掠める白粉花の匂いは、紛れもない夏の夕方だ。



 大雨だといわれていたが、結局晴天。どころか梅雨明けしてしまった三連休。
 恋人とちょっとしたハイキングに出かけたり、映画を観たり、散歩をしたりで結構アクティブに過ごす。

 先週一週間悩まされたアレルギーも、ほぼ完治。鼻詰まりとそれに伴って低下した聴覚による生活の不具合は、自分が日頃如何に嗅覚と聴覚に頼って生きていたかを実感させたりもした(野性の証明)。

 スーパーで甘い匂いにつられて買った桃を齧る。この瞬間が、私にとっては夏の到来なのかもしれない。染みるような甘さに、五感がようやく正しく機能するのを実感する。
 この辺の特産品なので、桃やら葡萄やらの果物がびっくりするほど安かったりする。果樹栽培が盛んなこの土地では、夏はステキだ。


 月曜日が休みだったので、今週は一日短い。
 病み上がりにはちょうどいいリハビリだろう。一週間がすぐ終わるのはありがたい。

 不調を言い訳に先送りにしていたあれこれを、ぼちぼち実行に移そう。