花散らし

KyrieEleison2005-04-10


 金曜の晩、残業を終えて10時過ぎに家に辿り着くと、恋人から電話がかかってきた。私たちの大学院時代に、それぞれの研究室の助手を務めていた二人と、夜桜を見に来ているのだとか。

 「今から迎えに行くから。」
 「…って、えー!?」

 大学院時代も、こうやって研究室の誰かが夜中に集まると、仲間の家を来襲して拉致しては深夜のドライブに連れ回したりしたものだ。

 一年ぶりくらいに会う二人の元助手は、現在大学職員をしており、相変わらず絶妙なコンビネーションで恋人をイジリ倒していた。
 私にとっては、ちょっぴり邪悪で楽しいお兄さんたちだ。


 仕事で疲れたりすると、改めてこの人たちとの付き合いの心地よさにほっとする。見守る眼差しに、癒される想いがする。
 本当に、心から幸せを祈っていてくれる人たちなのだ。


 川辺の桜並木の下で、熱いお茶を片手にあれこれ近況報告し、また山手の公園の桜の花盛りの森で街を見下ろし、風と花を堪能した。

 翌日私に予定があったので、早めに(それでも2時間ほど)帰してくれたが、本当はもう少し遊んで欲しかったところだ。

 けれど、あの頃のような時間を持つことが出来て、良かった。
 こんな機会でもなければ、今年は忙しすぎて桜に目が向かなかったかもしれない。


 自然の楽しみ方を、思い出させてくれる人たちなのだ。彼らがそれを楽しみ、感謝する生活を、きちんと送っているから。

 ささいで、けれど大きなことを、思い出させてもらった気がする。