世界の根拠
その、静謐を愛す。
小雨の降る中、おばあさんと、共に歩くイヌとすれ違った。
白いイヌは、車通りの激しい国道の脇を先に立ち、おばあさんを振り返りながら歩調を合わせてゆっくりと歩く。
その、おばあさんを見守る眼差しの優しさに、なんだかひどく胸を打たれた。
静かで、少し寂しくて、そして満ち足りた光景だった。
新しい法王が決まった。保守派のドイツ人枢機卿が、ベネディクト16世に。
革新的な体制に移行するには、まだ機が熟していないということか。
正直、生活に関わることに宗教が力を持つ時代は、もう終わりつつあるのではないかと思う。
2000年もの昔に説かれた教えには、現代にも有用な部分と、そうでなくなった部分があって当然だろう。
時代の変化と共に、価値も環境も生活も変わる。
ただ同時に、他者への愛だとか善を求める心だとか、そういった普遍的なものはやはり在り、宗教とは、その部分に寄り添えるものであれればよいのではないかと思うのだ。
カトリックの教えは、そもそも人海戦術で実行しないと実現し難いものでもある。多様な価値観の中では、ともすれば他者に押しつぶされてしまう類のものだ。
その脆弱さを、誰も傷つけることなく守れるように。
そういうバランス感覚が、必要な世界なのだ。
そうはいっても、このまま時代錯誤の教理ばかりを押し付ける独善的な組織ではいないはずだ。
神はすべての人間を愛し、良いようにしてくれる。
これが、この組織の前提であり命題なのだから。