引き戻るならあなたのせいで

秋である。


恋の季節は春だというが、日本の春は花見だ桜だ年度末だで忙しすぎて恋どころの騒ぎじゃない。
どちらかというと、それまでの賑やかさが消え去り、風に肌寒さが紛れはじめる秋の寂寞というか端的にいうなら人肌恋しさの方が、恋の契機としては切実な気がするのだ個人的に。
実際、私の場合、今までつきあった男はみな秋に出会っている。ちなみに、春や夏の男は一瞬にして終わる、ものの数にも入らないような遊びにしかならない。そして、冬の男とは悲恋風味で終わる。


統計的に見て、私の身の回りの色恋なんて概ね暦通りだ(しかも旧暦)。
無理して理性の純粋性を求めたところで、その先に広がる枠の存在にようやく気づくのみだ。
ならば、まかせてみるのも一興か。
ささやかな敗北感とともに。