時の堆積


未明から雨が降り始めたので、いつもは自転車で走り抜けてしまう駅までの道程を、傘をさして歩くことにした。


古いレンガ積みのトンネルをくぐり抜けると、秋草が野分の意匠のごとく土手を覆う。水滴を穂に飾った薄の中、沁みるように深い藍の露草が散る。
明け方の雨に、褪色した草花が色彩を取り戻したかのようだ。
やがて、斃れた命たちの上に、また降り積もるのだろう。


廻るものを、ここにも見る。