シクロ


 衣更えが終わったものの、まだ暑い日がちらほらとあり、毎朝天気予報を睨みながらスーツを選んでいる。通勤電車にも、Tシャツ姿の人も居ればコーデュロイやファージャケットを着ているひともいたりで、季節が混在している感じだ。
 いつまでも季節が定まらないのも、温暖化の影響だったりするのだろうか。

 それでも、ここ数日で金木犀が香ってきた。
 ようやく秋も本番だ。


 気がつくと、ずいぶん髪が伸びていた。夏の暑い時期を乗り切れてしまったので、そのまま伸ばすことにした。
 髪を伸ばせば女らしくなるかと思いきや、私の場合は余計に男っぽくなる。もとが男顔なためだろう、まるで若武者だ。忙しくてやつれでもすれば、そのまま落武者だ(イヤ過ぎる)。
 そして今まさに、落ち武者の如き形相で第三四半期と第四四半期の狭間を乗り切ったところだ。迷惑なことにうちの会社は四半期ごとに決算をする。そのたびに締めだの決起大会だので準備する側が大変だから、半期決算にしてもらいたいものだと切に思う。
 伸びた髪に気づかないような生活は、望ましくない。部屋だってひどい有様だ。寝に帰るだけで、生活する場所じゃなくなっている。

 仕事もようやく一段落ついたことだし、生活を整えなおそう。冬に入る前に、いろいろ準備をしなければいけない時期だ。
 お気に入りのストーブだって、メンテナンスしなければ。コタツを処分したので、この冬はコイツだけが頼りだ。きっと、すぐに寒くなるのだから。
 夏は外に出る計画を立てるけれど、冬はこうやって内で生活するための計画を立てる。私は寒がりなのだ。

 この冬は、自分のバイオリズムに従順に。
 ようやく、精神と肉体の波を掴みコントロールする術を身に付けつつある。そうなってみると、ずいぶん快適に良いことも悪いことも楽しめる。


 三十路を過ぎていろいろなことを思い切ってみたら、「私」であることのスキルが上がった気がする。そうやっているうちに失っていくものはあるのかもしれないけれど、それでも、新しく得ているものがあるという実感も、確かにある。
 「年を重ねるって楽しい」と思える。自分に対して図々しくなった分、自分から自由になった。

 かつての硬質さや純粋さをどこかにしまったまま、もっと自由に広がることが出来たらいい。新しいものを拓いていけるといい。
 そして、時々同じ場所に、立ち返れたらいい。