Juvenile


 小学校の校庭にメタセコイアが、緻密な骨格のようなシルエットを曝して高く聳えていた。
 梢の上には、満ちかけた月。
 不思議と静かな、それは聖樹のような佇まいだった。


 深まってゆく冬と、どこか遠いところから流れ込む、微かな春の欠片の気配。この、凍えるような空気に紛れるのは、水仙の匂いか。
 地中では、確かに季節が動いている。




 三日しか無いにもかかわらず十日分にも匹敵した先週の営業日を終了し、安全地帯のような三連休に救われるようにして正気を取り戻したところだ。
 しかし、週が明けてみればいきなり会社行きたくない病だったりするのだが。

 職場では、年末の慌しさでなんとなく先送りにしていた問題が年明けと同時に改めて噴出し始め、なにやら面倒なことになりそうな予感。せっかくこのところ、人間関係のいざこざとは無縁でいられたのに。
 一方で、私は私なりの見解と解決策を提示するも、「Kyrieさんて考え方がウチらと違いすぎてて感情移入しにくいんですよね。」とか言われてみたり。ああそうかよ。こっちだっててめーらの同情なんていらねーやい!


 そんなこんなでようやくやってきた三連休は、久しぶりに恋人とゆっくり過ごす。

 目覚めに雪化粧の景色に驚き、部屋を暖かくして撮り溜めた正月番組を見たり、時折雪の舞う中をわざわざ散歩したり。
 料理をしてお菓子を焼いて、お茶を淹れて。家事を落ち着いてできる時間があるのは嬉しい。本当は、大層ドメスティックな人間だ。

 そういった暮らしの穏やかさに、時折しもやけを暖めたときのようなむずがゆさをもよおしたりしてしまうのは如何ともしがたい性分なのだが、それでも、そういう時間を持てることを幸福に思う。

 一人の夜、闇の向こうに孤独を癒すものの存在を感じることが出来る。
 その存在を内包しているから、世界は好いものであると、やさしいものであると捉えることが出来る。

 私に世界を肯定させる、その根拠。
 誰かの祈りのようなものだ。