こころよ、ここにこないか。

せっかくの週末だというのに恋人は土曜出勤。それならばと、彼の住む街を訪ねて行った。


徐々に深まる、時代の影響を受けない世界。白や黄の花に溢れ、山々の木々は黒い枝先に生まれたばかりの柔らかい緑を宿す。
小川と小径と畝は複雑に野を織りあげ、人はゆっくりと田畑を耕す。


山の入り口を守るように立つ枝垂れ桜を、今年も見ることができた。
斜面に、薄紅の滝のように咲く。


ここには、人が頭で作り上げ高く天に聳える塔では無く、人間の底の方で営まれた世界がある。
それはいつも私の胸の中にあり、静かに私を呼ぶ。


イェイツの詩に詠われた、あの島のように。