The Longest Spring
部門史上最高額の決算賞与を受給するも、種々の控除を経て手元に残った金額に愕然とする。
何でこんなに税金高いんだよ!うわーん。
思わず、各国の税制度と国民の満足度を調査した白書なんかを読む。
この環境でこの税率は、とても妥当とは思えない。日本の税金はいったいどこに消えているんだ。
ああ、産油国に亡命したい…。
急に暖かくなったり、かと思えば翌日は雪が降ったり、めまぐるしい天気の変化が、強い風と共にやって来る。
梅の花弁が風に舞ったかと思うと、同じように今度は雪が舞う。
なんて嵐だろう。
気圧の変化に弱いので、このところ少々ぐずっていたりするのだが、周りの人々は慣れたもので、適当に気遣いつつ放置してくれるのでありがたい。
穏やかな人間関係を築くことにわりと成功しているこの職場は、時折大変居心地良く思える一方で、彼らの善意や好意をあっさり裏切って捨ててしまいたいような、焦燥感に似た苛立ちを感じたりもする。
こんな、箱庭みたいな世界で。
意図的に構築された平和や幸福。それだけならまだしも、争いすら制御下にあって、計画的に実行されるのだ。
においがまったくしないような、そういう世界だ。
基本的に人と物理的に接触することが嫌いなので、恋人と会わない時間が長いと、人の肌の感触を忘れる。
ふとした拍子に人の手に触れてしまい、思わず明確に嫌悪を表してしまった。相手に悪いと思い取り繕いつつ、この嫌悪の源はなんだろうと考えてみた。
私はどこか、裏切られたように感じていた。
まったく自分と切り離された世界のものとして捉えていた他者が、体温を持っていたことに驚いた。そういう彼らにも体温を与えられていたことに、がっかりしたというべきか。
生きているのは、私の世界に属するものだけではなかったのだ。
そういう、失望にも似た感情。
こういうとき、私は私を愚かだと思う。
そうは言っても、私の手はひどく冷たく、客観的に見たら熱を持っていないのはむしろ私のほうに思えるはずだ。
冷血だというのなら、それは私の方なのだろう。
私の指に触れた人は大抵、その冷たさに驚いて手を引く。
ごく稀に、あまりの冷たさに驚いて、咄嗟に自分の手で包み込む人が居る。自分の温もりで、暖めるために。
そして私はさらに驚いて、自分からその人の手から逃れる。
結局私は誰の手にも掴らず、世界に身勝手な線引きを施すのだ。