長い夜の話
夜中のチャイムに訝しんでインターホンを取れば、ノイズ交じりの呼吸音。
「アイム ユア ファーザー(シュゴーパー)」
玄関を開ければ、ダース・ベイダーが立っていた。
「…バカじゃないの?」
後輩と共にやってきたベイダー卿もとい恋人は、マスク(ボイスチェンジャー付)以外は普段のカジュアルスタイルだった。Gパンをはいた関西弁のダース・ベイダーが玄関に立っている図は結構シュールで、なんだかギャラティックな悪夢を見そうな気がした。
旧居の片付けは意外と順調に進んでおり、今週半ばの休日に有休をつけて、二日がかりで一気に片をつけてしまう算段。問題は、回収日が少ない埋め立てゴミの類だ。これはもう、市のクリーンセンターに搬入する。
丸々ひと月かけた引越しが、今週末でようやく終わる。さすがに忙しい一ヶ月だった。これであとは、ゆっくり新居を整えていけばいい。
仕事も、ビッグイベントであるところの来週のクリスマスパーティが終われば落ち着くだろう。後は、年内の仕事は終わったも同然だ。
スケジュールに来年のことが入ってきたりして、そろそろ年末特有の焦りが出てきている。パーティが終われば、それこそ本当にすぐ年末だ。そして、年が明ければすぐにあれよという間に4月になる。
今日も、来春の新卒用のPC手配の打ち合わせをした。まだまだ先の話だと思っていたけれど、うかうかしていられない。
会社員になって、本当に時間が過ぎるのが早くなった。季節感が追いつかないほどに。今の季節を味わう間もなく、すぐに次の季節に変わってしまう。
それでも、夜空の色や花の匂いのような欠片を拾って、実感の希薄な時間の経過をどうにか自分に納得させている。
せめて週末は、ゆっくり世界を眺め直したいものだが。
来月は、そうしよう。
すっかり冬支度の街を歩いて、年末を迎えよう。