坂道

社長が解任された。突然。
もちろん業績の悪化と回復の見込みがないことが理由。外国籍のオーナー会社なので、こういう決断はシビアで早い。5年で5倍の成長を遂げる会社だ。悠長なことを言ってはいられない。
責任を取るということは、そして取れなかったということは、そういうことなのだ。
新卒で入社して以来、秘書をしたりいろいろな場面で一緒に仕事をして目をかけて貰い可愛がって貰ってきた。社会人としての私は、間違いなくあの人に育てられた。
親を失うようなものだ。


会社というものは、それでも動いていく。それはそうだ。神が死んでも動いてきた世界だ。そこには神でない者たちが生きているのだ。


この犠牲を何によって贖うべきか。生き残った者に常に突きつけられる問いだ。
その人の姿は見られなくなっても、想いは続いていく。継承によって。存在の大義は、恐らくそれなのだろう。


そのために人は、強い決意を生むのだ。