子らよ歌え

九月になり、逃れようもなく秋。


夕方、息抜きに日経NETを見ていたら、初水揚げされる大量の秋刀魚の記事。刀みたいにピカピカした魚体が船に積まれているのを見たら、私の秋心に火がついた!
絶対今日の晩飯はサンマにする!と鼻息荒くデパ地下に駆け込んだのに、水産コーナーはむなしく氷が敷かれているのみ。まだ6時半を回ったばかりだというのに既に完売。みんな考えることは一緒か!
そりゃそーだ。たった100円やそこらであんなに満足させてくれる食材、そうそうないぜ。
つーか日頃のご愛顧に感謝して日経新聞は一部につき一本サンマつけろ!


この夏はしかし暑かったし、よく遊んだ。
映画もたくさん見た。全然期待していなかったのにものすごくおもしろかった『ダークナイト』とか、意外に楽しめた鬼太郎とか、わりと当たりが多かったんじゃないだろうか。


なかでも話題の『崖の上のポニョ』は、CGの高速で緻密な動画に慣れた目には、セルアニメの素朴さと温かさがものすごく新鮮で、なんか良い気分になった。ストーリーも、余計な解釈は無粋になるくらいのシンプルさで、素直に楽しめる。
このところ、宮崎駿監督のインタビューを目にする機会が多いのだが、子供を対象としてものすごく具体的にとらえている感じとか、思い入れとかが強烈で、「このオッサン子供好き過ぎ…」と若干引いてみたりした。だが、監督のこれは、種として子孫を慈しむ目線なのかもしれないと思った。
個人としての人格じゃなくて、人間の総体としての意志。今そこに生まれて在る生命を、愛しむ眼差し。


救われない、悲観的な世界背景に拠る物語が多かった作品は、今回全てが肯定され、救われ許され癒される世界を体験した。
ただ、一生懸命守る。一生懸命好き。それが、肯定される世界。


疲れていたのだ。もう見えてしまっている未来の悲劇に、現在までをも否定し蔑み、希望すら許されない状態で私たちは息苦しく生き繋いでいかなければならない。イデオロギーのぶつかり合いや、善悪の複雑に折り重なる現実。けれど、そういったものを一旦置いて、世界を愛しなおす物語。


「ひとまず産まれた子供をみなで祝福し、一緒に苦しみながら生きましょう。そんな風に思います」
良いインタビューだった。