風の通り道

日曜日は恋人が休日出勤のため仕事が終わるまで彼の家でごろごろするつもりだったのだが、天気も良く風も爽やかだったのでシーツだのタオルケットだのを洗濯して、かつ先日亡くなった後輩がやり残していた掃除を片付け、時々縁側で休憩しては一階と二階を行き来して掃除機をかけたりしたら、ずいぶんすっきりした。

かの後輩は、書生のように恋人の家の一部屋を根城にして、掃除やら洗濯やらの家事を取り仕切っていた。そんな痕跡が、あちこちにある。けれど、亡くなった人の遺したものは、陽の光と風を当てなければだめだ。閉ざしてしまってはいけないのだ。閉め切っていた障子を開けて、家中の窓をあけ、玄関も開け放して、風を通す。すると、滞っていたものがみるみる流れ出ていったようで、この日、こんな気持ち良い快晴になったのは、彼のはからいなのかもしれないなんて思ってみた。
夕方帰ってきた恋人は、玄関に入ったら他所の家かと思ったと言った。空気を変えるだけで、家は変わる。少し、息がしやすくなったように見えた。
来週は、後輩がやり残した最たるものである、庭の草むしりに着手しよう。そして、花やブルーベリーやイチジクを植えて、あと庭で洗濯物を干せるようにしよう。光と風の中で、想い出を語ったり偲んだりできるようにしよう。