冷気の色素
実家の母から電話があった。
月に一度くらいは、元気かと連絡をくれる。そちらはどうかと聞けば、連日大雪だと笑っていた。
実家の、雪景色の茶庭が好きだ。
冬に帰省すると、炉で温めた茶室のにじり口を開けて、静かに庭に舞い降りる北陸独特の牡丹雪を眺めるのが好きだ。
古い家特有の面倒ごとが多いのが億劫ではあるが、ここで過ごす時間は気に入っている。
昨日抜いたおやしらずの経過は順調で、薬が切れるとうっすら疼痛があるものの、腫れることも無く安定している。
鎮痛剤のためかやたら眠く、今日も目が覚めたら午後をとうに回っていた。
届いた宅配の食材をごそごそ漁って、トマトと卵を焼く。素材が美味しいと、味付けがいらないので楽だ。
空気を入れ替えようと窓を開けたら、晴れてはいるものの空気がずいぶん冷たい。そういえば、ここ数日、断続的に強い寒気に覆われている。温暖な瀬戸内海沿岸も、珍しく雪に見舞われているとか。
まだ冬の特徴を色濃く残す弱い陽光の景色は、静かで、じっとなにかを待っているような辛抱強さを感じさせる。
しばらく眺めて、窓を閉めた。
ストーブをつけて、今日は静かに過ごそう。