風巻く翼に

鞍馬に行って参りました。
牛若丸が天狗と剣術修行をした、あの鞍馬山です。このところゾウだのキリンだのを接写したり、シカと友好関係を結んでみたり、なかなか活動的な週末を過ごしておりますが、今回は天狗を探しに京は洛北まで参りました。
このあたりは平安の昔から都のあてなる人々が避暑に訪れたり霊的なんちゃらをいただきにはべりけるなどした、まぁ歴史あるパワースポットです。夫との不和に悩んだ和泉式部も「ダーリンの浮気症をなんとかして欲しけり!」とかいって貴船神社にお参りしてます。


鞍馬へのアクセスは、大阪からなら京阪に乗っておけいはん気分(ローカルネタ)で終点出町柳まで出ます。その他遠方からなら、新幹線で京都駅まで来たらあとはどうにかして出町柳まで出てください。そこから、叡山電鉄に乗り換えて山の中を登ること30分で終点鞍馬駅に着きます。途中、大学がいくつかあるせいか、小さい電車に個性的な若者たちが乗り降りします。京都は大学の街なのです。車窓からも、学生向けのアパートやら昔ながらの下宿屋などが見られて、なんとなくノスタルジックな気分になります。
油断をしていると、いつの間にか四方を山に囲まれるような奥地に来ていて驚きます。鞍馬駅に着くと、早速天狗がお出迎えしてくれたりで、いやがおうにも気分が盛り上がります。駅前や門前には昔ながらのみやげもの屋さんが並んでいて、食事もできます。私はとろろそばを食べましたが、関西では珍しくちゃんと美味しいおそばでした。ここに来るまでで若干疲れていたのですが、そばつゆの塩分とわさびのおかげで身体が目覚めた感じです。夏場は汗をかいて塩分を失うので、きちんと塩気を取っておかないと。
鞍馬寺の山門で「愛山費」として200円支払います。そこで地図をくれるので、これは大事に持っておきましょう。鞍馬〜貴船へのハイキングはおよそ二時間半の道のり。この地図を頼りに歩きます。なお、この敷地内では途中紙パックの飲み物のみが売っている自販機がひとつある他はペットボトルなど売っていないので、あらかじめ駅前などで購入しておきましょう。また、ゴミを捨てる場所もありませんので、ハイキングの常識ではありますがゴミは自分で持ち帰りましょう。
山門をくぐって石段を登ると、すぐにケーブルカー乗り場があります。これは、山上の本堂まで二分ほどで一気に行きます。体力に自信がない方、ピンヒールの靴等できちゃった方、あまり時間がないという方などは、こちらを利用された方がよいでしょう。100円です。また、このケーブルカーは鞍馬山鋼索鉄道といって日本で唯一宗教法人が運営する鉄道らしいので、そっち方面に興味のある方も是非乗ってみると良いでしょう。
が、私は歩きに来たのでその横の参道をぐいぐい歩きます。

登るとすぐ、由岐神社があります。これは、鞍馬の火祭が行われる神社で、御輿がこの拝殿を通り抜けます。結構急な石段なので想像するとどきどきしますが、ちゃんとスピードが出すぎないように引っ張る人たちがいるそうです。主に若い女の人たちがするそうです。
この神社では天狗みくじなるものがあり、面白いので買ってみました。

こんな鈴型のキーホルダーになっています。どこがおみくじかと言いますと、

このように、後頭部に刺さっています。開いてみると、なんと大吉!

滅多におみくじなんて引かないのに!
「災害自ら去り福徳集まり誠に平地を行くが如く追手の風に船が進むが如く目上の人の助をうけて喜事があります信神怠らず心正しくしなさい」
「信神」てどの神を指すのかしら。私カトリックなんでヤーウェでも良いのかしら(カトリックのくせにおみくじとか引くな)。とにかく、これがマイファースト天狗となりました。


さて、さすが古くから霊地として守られてきただけあって、樹齢の高そうな巨木があちこちに見られます。「樹木の高齢化社会やー」とか彦麻呂なら言ってくれるかもしれません。また、季節の草花や昆虫なども楽しめます。



この山は自然観察園となっているそうで、おそらく山門で支払った「愛山費」がこの山の自然保護に充てられているのでしょう。多くの山岳寺院で、このくらいのことをしても良いのではないかと思います。
初夏の行楽日和の土曜とあって、軽登山装備のハイカーからデートで来ました的なカップルからいろいろですが、いつも驚くのは若いオシャレ女子のド根性。華奢なサンダルで、ガーリーなノースリーブワンピの白い腕を晒したまま輝く笑顔を彼氏に向けたままでこの山道を登り切るなんて、おばちゃんを通り越しておっちゃんになった私にはもう無理です。つーか無理じゃないときが人生で一度もありませんでした。生まれる時代を間違えたのか、出てくる産道を間違えたのか今となってはわかりません。


そうこうしているうちに、小一時間ほどで本堂です。
ところで、ネット等でこの鞍馬寺についてちょっと調べていただければおわかりになるかと思いますが、元々は比叡山の目の前であることから天台宗だったのですが、近現代以降のこの寺は鞍馬弘教総本山と改め、金星からやってきた(!)尊天・魔王尊(サナート・クマラ)という、少なくとも伝統仏教の教理には見られない本尊を祀っています。境内のあちこちにたつ看板にも宇宙エネルギーとかなんとか、若干の胡散臭さを否めません。しかし、尊天とか魔王尊とか厳めしい名前の割には本堂で祀られている本尊・尊天様のお姿は天狗そのもの。高尾山とかにいたら、間違いなく天狗呼ばわりされているところです。
そして、本堂と参拝客たちの間には奇妙な空間が。

普通だったら本堂前から賽銭を投げて鰐口やら鈴やらをガラガラいわせて拝むところを、

この円陣というか五芒星の真ん中の三角の上に立って祈るのです。…って、
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
いやもうあれですかね、五芒星の中央の三角形に集約された宇宙のエナジーを一身にいただいちゃうカンジですかね。
しかし、「人のセックスを笑うな。そして、人の信仰を馬鹿にするな。」この言葉を深く心に刻んで、私はこの場を後にしました。形はどうあれ、何かを敬う気持ちは人として自然な感情ですし、それは大切なものです。ただ、身を顧みることなく何も犠牲にすることなく、「そこに行けば何か特別なモノが貰える」みたいな、インスタントな現世利益主義に違和感を感じているだけです。偏屈なのは自覚してます。


さて、ここからはさらに奥山に向かい、貴船方面に降りていかなければなりません。途中、宝物殿(200円で自然史的な展示から平安後期の毘沙門天像など結構楽しめる)やお堂があったりして、ハイキングの道中としてはなかなか盛りだくさんです。

鞍馬山は庭石で最高級とされる鞍馬石の産地でもあります。従って、岩がごろごろしているのですが、おかげで木々が深く根を張れず、こうして地表に広がっているそうです。その先には僧正天狗の社なんかもあり、ミステリアスな雰囲気を盛り上げます。

その傍らには、こんな注意書きが。

「良識ある行為こそが正しい信仰の第一歩です。迷信にとらわれたり、非常識な行をしたりして身を亡くさぬよう、ご注意ください。」
…だそうだ。みんな、注意しよう!(つーか、一体何があったの…)
まぁたしかに、そんなヤバ気なアンテナの伸びた人たちを集めそうな場所ではあります。あちこちで、「あ、ほんまや、見えるー」とか(私の)目に見えないモノを見たり、「ほら、いま聞こえてん」とか(私の)耳には聞こえないモノを聞いたりしている人とかがいて、全く気が休まらない!誰だ癒しのスポットとか言った奴は!癒やされたがりな人たちが集まるおかげで全然オレが癒やされねー!!
「コレ、めっちゃきれいやのに写真には写らへんのやろうなー」とうっとりと魔王堂の向こう側を見ている女性とか、もう泣きたいです。

ちなみに、私の写真にもソレは写りませんでしたが、そもそも私にはソレが見えませんでした。べつに悔しくなんかありません。コレといって主義主張のないノンポリの私ですが、強いて言うなら目に見えないモノは基本信じない拝金主義者です。


さて、奥の院魔王堂を過ぎれば後は貴船への道を下るだけです。いささかうんざりした思いを抱えながら、山道を下ります。鞍馬側に比べ、貴船側は川の湿気のためか、苔むした木々が多いように思いました。

そして、所々に不動明王の石仏が。

だから何で石を積むの…。
徐々に川のせせらぎや車の往来する音が聞こえるようになり、鞍馬寺周辺より賑やかになってきます。下りはあっという間で、貴船側の川床料理屋が並ぶ貴船神社前に出てきます。

ここは古より水の神様として有名です。また、縁結びとしても有名で、先に言った和泉式部なんかもそういうわけでお参りしていたそうです。しかし、なんで水神で縁結びなのかはよくわかりません。水心あれば魚心ありでしょうか。境内には「水占」なるモノがあり、水の上におみくじを浮かべるとお告げが浮き出るという代物もあります。


また、絵馬発祥の神社であるそうで、元々日照りには黒馬、長雨には白馬又は赤馬を捧げていたものを板絵に変えて納めるようになったのが始まりだそうです。


さらに川上に向かうと、奥宮があります。

途中、磐長姫命(いわながひめのみこと)を祀った社があり、その入り口には「相生の杉」という一つの根から二つの神酒が育った杉の巨木があったり、奥宮の境内の傍らにも種類の違う二つの木が寄り添うように身を絡めて育った「連理の枝」などがあり、さすが千年以上も昔から続く由緒ある縁結びの神社は周辺の自然環境まで巻き込んでラブラブしたムードを醸していました。


パワースポットを訪れた際の例に漏れず今回もあちこちでいろんな人にあてられた感が否めませんが、要は自然というか人工物でないところに何か得体の知れない人の力が及ばない何かを感じる場所という意味でのパワースポットであるのなら、日本中がパワースポットだらけなわけで、そうはいっても日本は自然が豊かでそれを敬う感性を日本人は失っていないと言うことの証左であるかと思います。
ともあれ、歴史上の人物の足跡があちこちにある場所というのは、興味深いものです。特に京都は長らく歴史の中心であったことから、学校で勉強した人たちの痕跡が肌で感じることができて、ワキワキします。

また、貴船神社周辺は川床が並び、夏には川魚料理や涼しげな京懐石が、秋冬は紅葉を愛でながらボタン鍋などが供されます。私も数年前に両親と訪れましたが、鮎料理や絹糸のようなそうめんが見た目にも涼しく、京の納涼を楽しみました。次は、秋冬のこたつにはいっての鍋をつつきに来たいものです。


休憩などを含めておよそ三時間のコースでしたが、起伏に富んだ内容と行程で飽きませんし、京都の市街地ではなかなか味わえない野趣を体感できます。
京都のうだるような暑さに参ったら洛北へ!

あおによし

奈良の春日の青芝に腰を下ろせば鹿のフン。
・・・誰だ小百合ちゃんにそんな歌うたわせたのは。


さて、奈良は春日山原始林で、ちょっとハードな日帰りハイクを楽しんで参りました。夏の富士登山に向けて、体力作りの一環です。
修学旅行や遠足で一度は訪れるであろう春日大社の裏側に控える春日山は、千年以上の長きにわたり神域として伐採と狩猟が禁じられ、ひと山ほぼ丸ごと原始林として残っています。市街地に隣接するこれだけの規模の原生林は珍しく、2002年に世界遺産に登録されました。
今回は剣豪の里柳生に抜ける滝坂の道〜春日奥山遊歩道を歩いて春日山をぐるりと巡り、若草山を下って奈良盆地を睥睨しながら戻るというコース。これが、チョー楽しかった!


難波から近鉄奈良線で、特急を使えば30分で行けると言うことが判明し驚きました。毎日近鉄難波の改札前を通っていながらこれまでの人生で近鉄線に乗ることがほとんどなかったのです。おのれの近鉄リテラシーの低さを改めて実感。しかも、平城遷都1300年祭を迎えて浮き足立っている近鉄奈良線は、そこここにせんとくんが存在を主張して油断ならない。駅のあちこちに置かれた身長1mほどのせんとくんフィギュアは鼻筋が変に通っていて、やっぱりこの子ディテールがキモイ!
しかし、近鉄難波は構内が古いせいもあり、駅の窓口とかどこかレトロな感じで旅気分が盛り上がり、駅弁と冷凍ミカンを買いたい気分にさせます。実際買ったのは梅おにぎりとベビースターでしたが。


車窓からの見慣れない景色に「へー」とか「ほー」とかいって、ついでに平城京跡なんかが見えて「おぉ!」とか言っているうちに近鉄奈良駅に着きます。そこから、市内循環バス(外回り)で破石(わりいし)バス停まで10分程度(料金は前払い一律200円)。閑静な住宅街を山に向かってずんどこ進んでいくと、それらしい標識が。「滝坂の道」とか「春日奥山遊歩道」とか書いている方に進んでいくと、うっかりしていると気づかないくらいスムーズにもののけ姫の世界へ誘われます。江戸時代に敷かれたという石畳がところどころ山水でびしゃびしゃしているけど、気がつけばすっかり古道をハイキングしている自分がいます。

この道はせっかく石が敷いてあるものの、雨の後など滝のようになってしまうので「滝坂」の道と呼ばれるとかなんとかあとでしらべたら書いてありました。たしかに、足場はややハード。しかし、ずっと渓流の横を通っているからとりどりの滝を楽しめるし、夕日観音・朝日観音などそれぞれ夕方と朝の光を受けると姿を現す磨崖仏や、荒木又右衛門が刀の試し切りをしたと伝えられる首切り地蔵など見所が多くて、苔むした倒木を眺めたりしているうちに一時間ほどの道のりですがあっという間に分岐点に。

こういう山水があちこちから流れ込んで道がびしょびしょになっていく。

苔むした倒木。ここにも一つの森が誕生か。

夜な夜な森の動物たちがその前に集まりそうな巨木。

木肌に苔のコロニー。

せっせと葉の上を往復していた蜘蛛。餌取りネットを張っていた模様。意外に勤勉。
世界遺産の標識。恐ろしいことに、山道としてはやや広いと思っていたこの道は、遊歩道のみならず「春日奥山ドライブウェイ」でもあり、舗装されていない砂利道を観光バスなんかも通ったりしていた。
山の中を二時間強ほど歩くと、車道に出ます。若草山東大寺の後ろにこんもりしているやま)の駐車場が目の前に広がり、太古の森から一気に文明の世界が戻ってきます。
と同時に、奈良の春日の青芝には鹿。

人間様には目もくれず、黙々と青草を食べる鹿。もっとも、目をくれたらくれたで凶暴なので、そのままスルーしていただいた方がお互いのためなのですが。
国際観光都市らしく、多言語でしかの凶暴さについて注意しています。とくに、「たたく」の項目では、シチュエーションがよくわからないのですがどうやら鹿が右側の三つ編み幼女を虐待している様子。か弱い女子供に向かって何をする気だ。神の使いとして保護されているからって横暴にもほどがある!
鹿せんべい売りおばちゃんの誘惑を振り切って若草山展望台に出ると、眼下には奈良盆地が広がっていました。

天気が良すぎて背景が合成のようになってしまった団体客たち。バスでやってきて、下りだけ自分の足で降りていくというコース。
若草山は三段くらいになっていて、頂上のてっぺんには鶯塚という古墳があります。てっぺんから見ると360度の大パノラマ。なんでも仁徳天皇の皇后磐之姫命の墓と言われているようです。仁徳天皇といえば堺のあの前方後円墳があまりに有名ですが、当時の都は難波の宮。大阪中央区のあたりです。仁徳天皇は磐之姫命存命中に従妹にあたる矢田皇女を后に迎え、そのために磐之姫命と不和に陥ったそうですが、彼女の死後に矢田皇女を繰り上げで皇后に据えています。磐之姫命には気の毒ですが、こんな遠くにお墓を造ったなんてよほど遠ざけたい妻だったのでしょうか。
しかし、そんなレディコミ並みのどろどろ古墳愛憎劇を考えなければ、山の中から出てきた上でのこの眺望はけっこう感動します。
傍らには、やはり鹿。

鹿せんべいくれるんか。」

「なんや持ってないんか。つまらん女やの。」
強欲なケダモノめ。

なお、冬の山焼きをする風景が風物詩となっているこの若草山は、入山期間が決められています。
春期 平成22年3月20日〜6月20日 午前9時〜午後5時
秋期 平成22年9月11日〜11月28日 午前9時〜午後5時

じぇんじぇん知らないで行っちゃったけど、ちょうど入山期間内で良かったです。なお、この期間外でも三段になった一番上の山には入れるので、奈良市内の夜景スポットとして人気のようです。


若草山を下ると、このハイキングコースも終了です。10:30頃スタートして14:00過ぎくらいについたので、四時間弱の道のりです。ちょうど奈良公園の北東側、お水取りで有名な二月堂付近に出てくるので、門前町の茶屋で遅い昼食にします。途中歩きながらあんパンとかキャンディを食べましたが、良い具合にお腹も空いていたので、山菜そばと柿の葉寿司のセットを食べました。美味しかった。
おみやげ屋さんを冷やかしながら、二月堂に向かいます。

店先には、売り物に紛れて看板猫。親子で丸まっていました。


実は二月堂に行った覚えがなく、実物を見てもやはりぴんとこなかったのでやはり行ったことがなかったのかも。十一面観音を本尊としており、本堂は清水寺長谷寺のように西に向かう舞台になっています。


なお、本尊十一面観音は秘仏です。平安後期の『覚禅抄』によればここの本尊の十一面の顔は上下縦に並んでいるそうで、実際にその図は見たことがないのですが、想像するとエヴァ弐号機みたいでコワイです。しかし、これは古い十一面観音の様式ではないかと考えられています。やはり、縦に顔が並ぶのはちょっとキモイので、時代が下るにつれメイン顔がかぶっている宝冠の上にアクセサリー感覚で並べ、今日我々が慣れ親しんでいる十一面観音の姿になったのではないかと。
二月堂の下にはお水取りで使われる若狭と通じているという井戸や、鬼子母神を祀ってザクロがいっぱい植わっているお堂なんかもあります。しかし、やはりこの界隈は記憶にないなー。有名なので行ってないことないとおもうのですが、どうやら興味がなかった様子。


さて、東大寺大仏殿にやってきました。周辺および内部は、大量の多国籍観光客と修学旅行生でごった返しています。

大仏殿の、大仏様のご尊顔が見えるという小窓は閉まっていました。

そのことについて、
「あれはなにCloseなわけ?天気が良くて眩しから閉めちゃったよ的な?盧舎那仏大日如来/太陽を表す)のくせに太陽眩しいとかなくね?つかむしろおまえが遍く光で眩しいっつの。」
などと如来をつかまえてえらそうにdisっていたのですが、実際はそもそも大晦日と元旦の年越しの際にしか開かないそうです。自分の無知が今更ながら恥ずかしすぎて、大仏様の鼻の穴にでも入りたい・・・。


仏「気持ちはわからんでもないけどワシ今ブタクサの花粉症やからやめといた方がええんちゃうかな・・・ずびっ。」
K「これも仏の御心…!」

久しぶりに見ても相変わらずの威容で、現代人の、しかも異文化から来た外国人でもやはり畏れという感覚を覚えるのでしょうか。なんだか自然と手を合わせてしまっている風の人たちが見られました。


それにしても、ベストシーズンの行楽日和とはいえ奈良公園の人混みは半端ない!山から出てきた身としてはいささか当てられ、ふらふらと東大寺を後にしました。大量の観光客からたらふく鹿せんべいを貰ったせいか、あの角を持った野獣たちもずいぶん穏やかでした。


帰りは近鉄の急行に乗って、難波に着いたのは18:00過ぎ。なかなかの大冒険でしたが、日帰りハイキングとしては盛りだくさんで、充実した休日を過ごした達成感と心地よい疲労感でビールが飲めるなら一杯やりたいところです。が、ビールは飲めないのでアイスジャスミンティで乾杯してベトナム料理をかっ食らい、帰路につきました。


山道や歩道や公園など一日歩き回って、シューズやザック、ウェアの相性やコンディションを見るにはちょうど良い機会だったと思います。富士登山前にもう一度一日マジ登山をする予定ですが、それまでに足りない装備を揃えて、富士登山準備としたいと思います。


今回の参考図書。

日帰りハイク関西 (JTBのMOOK)

日帰りハイク関西 (JTBのMOOK)

海と山の間


白浜アドベンチャーワールドに行ってきました。
どこから行っても遠い南紀にありながら、動物園(含サファリパーク)・水族館・遊園地の三つの機能を備えた複合施設。しかも、上野動物園にすらいないパンダが6頭もいるパンダパラダイス!パンダの繁殖施設としても中国成都のパンダ繁育研究基地に次ぐ実績を誇り、ほぼ二年ごとにパンダが生まれているのです。中国成都以外で二年に一度子パンダが見られるなんて僥倖、世界でもここくらいです。


これまでも何度か訪れたことがあるのですが、人気の少ない冬の寒い朝にパンダエリアでまだ元気なパンダを舐めるように眺め、やがて電池が切れたように彼らが寝てしまう頃には一通り園内をさらって昼頃には帰るというパターンだったため知りませんでした。こういう施設で楽しむには盛況感も大事!パンダの帽子をかぶった子供を微笑ましく眺めたり、シロクマの帽子をかぶった彼女を連れたカップルを生温かく眺めたりしていると、いやがおうにもテーマパーク気分が盛り上がるってもんです。いままで人混みを避けすぎてました。
サファリゾーンも、三両仕立てのバスで回れたり、カートやジープもありますが、自分の足で回ることもできます。1.5Kmのこのコース、はじめて歩いてみたんだけれど、ゾウとかキリンとかさわれるくらい近くまで行けて、ガチャポン式の餌を買って餌やりできるし、楽しすぎる!




歩いてると、コース上にインパラとかピョコピョコやってきたりするし、バスに乗ってたらわからなかったにおいとか声とかの臨場感が半端ない!もちろん、猛獣ゾーンはフェンス越しとか高いテラスから望遠鏡で見るとか、来園者の安全は保証されています。
ちょうど夏日で、冬場はいまいち動きの悪かった動物たちも元気だったのも良かったです。
ほかにも、動物とふれあえるエリアも広くていろんな種類の動物が間近で見られるし、


バンドウイルカとかゴンドウクジラが惜しげもなく出てくるショーとか、演出も凝っていたし頭数も多いからすごい迫力だし、


うっかりしているとペンギンが行列で散歩しているしで、オンシーズンの休日に行くとほんとあちこちでひっきりなしになにかやっていて油断ならない!
また、バックヤードツアーとかもバリエーション豊富で充実しているし、園内は完全バリアフリー。子供から大人まで、むしろ大人の方が楽しめるのではないでしょうか。


今回気づいたのは、イルカのイヌのような従順さ。イルカはもともと好奇心が強くて、野生でも人間の乗る船に近づいて遊んでくれとねだるような人懐こい生き物らしいのですが、ショーに出ているのではないイルカプールの横でみているとイルカは近づいてくる人間に寄ってきて、人間の目をじっと見るのです。

そのように躾けられているのでしょうが、飼育員やトレーナーのみならず人間と触れ合っているイルカは嬉しそうで、面白い生き物だと思いました。


それにしても、ああいう施設で働いている人たちは、子供の頃からの「動物園の飼育員になりたい!」という夢を実現したんだろうなーと思うと、大変だろうけどやはり尊敬せずにはいられない。子供の頃の夢を叶えられる人なんて、実際は本当に一握りしかいないことを、私たちはもう知ってしまっているのです。


なんか、長い時間滞在していろんなものをゆっくり見られたせいか、今回はいろいろ楽しみました。
しかし、パンダがまた自然交配したとかで、うまくいけば夏頃に子パンダが生まれるかもしれないらしくて、また行かねばなるまいよ!頼むぜ絶倫パンダ父さん!

橋の下から


会社ではしばしば絵描きとして使われる。
うちの会社では、一件の成約につき一本の木を東南アジアに植える。社会還元活動の一環として、植樹活動をしているのだ。数年前にそのプロジェクトが始まった時、私は社長と総務部長からイメージキャラクターを作れといわれた。
「一件の成約が一本の木になって私たちの星を救う」というようなコンセプト。


じゃぁ、とりあえず地球的なカンジで。地たまくん。

・・・ボツだった。
部長「なんか木っぽくないし。」


じゃぁ、木っぽいカンジで。ガジュマルくん

・・・またボツだった。
部長「目つき悪いし。」


じゃぁ、目をぱっちりと。ガジュマルくん2

・・・でもボツだった。
部長「つーかメタボのおっさんみたいだし。」


じゃぁ、愛らしい感じで。根っ娘ちゃん

・・・やっぱりボツだった。
部長「・・・もうちょっと発想を変えてみようか。」


うん、木そのものにこだわりすぎてたよね。木りんくん

・・・なのにボツだった。
部長「表情が冴えないし。」


じゃぁ、溌剌と。はっぱくん

・・・結局ボツだった。
部長「なんかコンセプトから離れすぎてるし。」


最終的には無難な感じのぞうさんカップルキャラが採用されました。会社の持ち物なのでここには公開できませんが、ホント無難でつっまんねーカンジのキャラクターが採用されていまい、誠に遺憾でした。漂白しきった、「オレ流」という者があるのならば一切排除された感じのやつ。結局多くの人に好ましいと思われるものを作るとなると、最大公約数的なものになるのです。


職業デザイナーってそのへんのジレンマが大変なんだろうなーと垣間見られた一件でした。
私はふつうの管理系の仕事が良いです。

飛んでゆけ

KyrieEleison2010-05-23



高雄山に行ってきました。
東京のミシュラン三つ星観光地であるところの高尾山とは違います。京都の奥山、昨年訪れた栂尾・槙尾と並んで「三尾」と称される、高雄山神護寺です。なんだか恋人が乗り気だったのです今回も。ええ、我々が大学院時代イヤというほど学んだ弘法大師空海に所縁の寺なので。空海と、当時すでに名を成していた最長がそれぞれの最盛期を過ごし、また双方の交流が伺える場所でもあります。


この高雄という土地は京都の北西部に位置し、庭木でよく使われる北山杉が有名です。都の北側の山で栽培されたから北山杉という中華思想丸出しのネーミング。中でも、台杉という仕立てのこういう木、日本庭園とかで見たことあると思います。うちの実家も張り切った造園業者に何本も植えられてしまい、「やり杉w」とか呼ばれてます。

中心の幹を切ってしまい、脇から生えた枝を伸ばす模様。長男に生まれなかったために土地を継げず小作人とかの水飲み百姓にならざるを得なかった次男坊以下とか、虐げられた者たちのルサンチマンを感じずにいられない栽培方法。*1


JR京都駅前からバスで小一時間。仁和寺の前を通り過ぎたあたりからどんどん山の中に入って、カーブにうとうとしているうちにとんだ山奥に辿り着きます。もみじの木が多く、このあたりはまた紅葉狩りの名所としても有名です。
バスを降りるとまず渓流に向かって石段を下り、そこから参道が始まります。人生谷あり山ありをこんなところで教えられました。350段あるそうです。

しかし、初夏の新緑が美しくまた川からの風が涼しいので、ハイキングにはちょうど良いと思います。割とふつうに軽登山な感じのスタイルの人も多く、先週の室生寺に引き続きここも舐めてかかると若干痛い目に遭う感じ。すれ違ったヒールのオシャレ母娘は「京の奥座敷」という響きに騙されたという顔をしていたので、「京の修行場」とか正しいイメージ作りをすべきかと。しかし、「紅葉の名所」なんてのは山と谷があると相場が決まっているのだから、彼女たちの読みの甘さは否定できない・・・。しかし、この先には女性に人気の僧侶明恵の寺で鳥獣戯画で有名な栂尾山高山寺もあるので、女旅で行きたくなるエリアではあるよねー。
さて、参道の途中には空海が「嵯峨天皇に寺の額を書けと言われたけど川が氾濫して出向けないのでこの岩を硯にして中に字を書いてみたらその墨が飛んで額に字が書けたよー」とう無茶な謂われの「硯石」があります。高野山の三鈷の松*2とか、空海はそういう豪腕伝説みたいな話が枚挙に暇ない。どんなマッチョ僧なの(つーか、マッチョでインテリって結構萌えツボか)。

山寺の宿命である高低差をひいふういいながら、ようやく山門に到着。

参拝料を払って門をくぐると、そこには意外に広い空間が。

開基の和気清麻呂の廟が右に見えます。こんな山奥に驚くほど立派な多宝塔や鐘楼が配置され、伽藍としてもかなりな規模。木々の間に見える金堂は、その威容にも関わらず静かな佇まいで、本尊は平安期作の薬師如来。脇に侍る日光・月光菩薩十二神将も併せて見事な迫力ながら、不思議と静謐な空間なのです。祈りの場所なんだなー。


さて、神護寺でもうひとつ有名なのが、かわらけ投げ。

各地でも見られますが、発祥はここだそうです。「厄除け」と書かれた素焼きの皿を崖下に向かって投げます。遠くへ投げれば投げるほど、厄が遠ざかるという寸法。しかし、恋人はなんか右曲がりに、私はひらひらと揺れながら手近なところに落ちていきましたが、それぞれ何を暗示しているのか。

結局厄は除けられたのかどうかわからないけれど、なんかずっと小さな虫が刺すでもなくただまとわりついてきて煩わしかったです。


しかし、同じ山寺でも奈良とはやっぱり雰囲気が違いますな。京都の山寺は瀟洒というか洗練されている。奈良のそれはもっと、荒削りというか質実剛健な感じがするのだ。それぞれ好みがありますが、私はどっちも好きです。
あと、バス停や参道の途中に何軒が茶屋があって、ひやしあめとかそうめんとか鮎の塩焼きとかを食べられます。階段の上り下りで汗をかいた後、木陰の涼しい中で休憩がてら冷たいかき氷とか、はたまた涼しい時期には温かいうどんとか、すてきすぎる。今回はかわらけを投げた山上でひやしあめをいただきましたが、きゅっと冷やされた飴の甘さと生姜の刺激が、汗をかくほど熱を持った身体には爽快でした。


帰りはまたバスに揺られて四条大宮まで。あとは四条をぶらぶら買い物しながら東に向かい、鴨川を渡って京阪に乗って帰るおきまりのコース。京都は道がわかりやすくて良いです。


三尾のうち二つを制覇したので残るは槙尾山西明寺なのだが、これはいまいち地味なのでどうだろう。紅葉を口実にまたくることにしようかな。
しかし、うだるような暑さになる前の京都は、緑も美しくて良いです。また来ます。

*1:実際は、成長した幹を材木として切った後、切り株の脇から伸びた枝をまた次々と伸ばして柱木として使う、株のリサイクルみたいな栽培方法らしいです。使った三つ葉の根っこについているスポンジを水に浸しておいてまた生えてきた三つ葉を使うような感じ。

*2:空海が唐から帰ってくる際に、遣唐使船から「おいらの修行道場に相応しい場所に飛んでいけー」と投げた三鈷が落ちた場所に生えたという三つ葉の松

水棲の神話

KyrieEleison2010-05-16

週末は奈良県南東部に行ってきた。室生寺と曽爾高原。三重県との県境エリアだ。
室生寺は、先日大学院のゼミに顔を出した恋人が、授業で取り扱っていた古地図の検証をしてみたいというリクエスト。曽爾高原は、だだっ広いところに行ってみたいという私のリクエスト。結果的にどちらも思いの外楽しんだ。


室生寺は古くから女人高野と呼ばれ、国宝の五重塔が有名な深山幽谷というに相応しい谷間の山寺で、年中参拝客が絶えない名刹。うちから車で一時間半ほどなので、長谷寺と併せてしばしば訪れる場所。

十数年前の台風で破壊され、再建された。
周囲の地形は屏風のような岩盤質で、岩山を切り開くように造られた境内の奥の院には弘法大師の御影堂がある。鬱蒼と木々の茂る中、崖のように急な階段を上らなければならないのだが、心得た参拝客は軽登山の格好で挑んでいた。

ナメてかかると痛い目見るぜ。

なぜ人は石を積むのだろう。おかげでなんだか賽の河原みたいな風情に。


偶然にもその日から金堂の内陣が特別公開されていて(なんか最近多いなそういうの)、普段は外側から薄暗い堂内を眺めるだけでよく見えなかった如来像や十二神将像を間近で見ることができた。平安期らしい柔らかさの如来像はどれも彩色が鮮やかに残っており、作りも美しい。十二神将像も、鎌倉期らしい躍動感と表情の豊かさ。保存状態からも、大事に信仰されてきたことがよくわかる。
金堂の特別公開は八月末まで開催されているようなので、機会のある人は是非行ったらよいと思います。今年の奈良は楽しいなー。


その後、川沿いにぽてぽて歩いて龍穴神社へ。ここは、名の通り竜神を祀っている雨乞いの社。創建はもはや不明らしいけれど、室生寺よりはるか昔から竜神が祀られていて、室生寺はこの神社の神宮寺*1だったと伝えられている。
本当に古くから、そして今もなお神域として守られていて、その空気を肌で感じられる場所。拝殿の奥に本殿があり、周囲は禁足地。奥には龍神が棲むという龍穴と滝があるが、参拝には神社の許可が必要で、さらに浄衣を身につけなければならない。そもそもこの神社も、目の前の道を挟んだ向こうの川から参道が繋がっており、本来川で禊ぎをしてから参るような作りになっている。そのくらい、徹底して穢れを排する神社。
数年前に何も知らずにドライブで通りかかった奥の龍穴の神域に入り込んでしまい、そのびりびりと切るような厳しい空気に驚いた。生活圏のどこにもそんな場所は経験がなくて、その異様さに慌てて出てきたのだが、あとからそこがこの神社の禁足地であることを知って納得した。何も知らずに触れてもそうとわかる。そのくらい、俗界とは異なる場所。
鳥居をくぐると巨木に囲まれた境内に入るが、拝殿の前はぽっかりと空いていて、陽が差し込む。ここだけ暖かい。脇にはこれまた古い二股の杉が、「連理の杉」として祀られていた。

一人で来たら、ちょっとどうにかなっちゃいそうな、そういう特異な場所だ。
拝殿に参って出ようとしたら、これまたスピリッチャルななにかをゆんゆん受けてそうな女の子が一人で鳥居をくぐってやってきた。なんかもう、大自然エナジーをいただいて喜びに充ち満ちちゃってオーバーフローしている感じの、目の焦点がやや近い一人笑顔がちょっと怖かったけど、まぁ気をつけて帰れ。家に着くまでが遠足だ。


室生寺にはよく行くモノの、実はあまり楽しんだことはなかったのだが、今回は堪能したな。やはり、私みたいに感受性が豊かでないタイプの人間は、前知識と目的意識は大事だな。何も知らずに感じるだけで楽しめるような柔らかい人間ではないので、予めいくつかのポイントをもうけてそれをクリアする方が性に合っている。要するに貧乏性なのだな。


駐車場に戻り車に乗り込んで、そのまま曽爾高原へ。室生よりさらに奥地へ向かう。ほぼ林道の細い道を走らせる割には行き先を示す標識が少なくて、不安になる。が、ライダーの一行や遠方ナンバーの車とすれ違うので、観光地がこの先にはあるはずだと信じて進む。やがて、不安もMaxになる頃ようやくきれいに舗装された道と合流し、いくつかの看板によりこの道が間違っていないことがわかり安心する。
曽爾高原は、関西ではススキ野原で有名な、関東で言うなら箱根の仙石原みたいな所だ。また、高地の少ない関西では珍しく高原らしい高原で、キャンプ場なんかもある。周囲の山の向こうに南アルプスでも見えれば、蓼科とかあの辺りに見えないこともない。見る必要もないけど。
ススキ野原は、亀山峠の裏側斜面になるらしい。切り立った峠までの一体が野原になっていて、秋には一面のススキを撮りにアマチュアカメラマンがひしめき合うとか。整備された道が峠まで続いていて、お亀池と呼ばれる湿地を回って登ることができる。周囲に遮るものがないので、峠に登る人たちの姿が小さく見える。こんな風に遠くの人が見えるというのも、珍しい光景だな。

向こうの方に見えるのが亀山峠。
もちろん登って、峠から見下ろす。

室生寺奥の院に続いてまた急な階段を上ったので結構疲れたのだが、普段大阪のど真ん中でビルの隙間の景色しか見ていないけれど、休日ちょっと車を走らせればこんな場所に辿り着けるのだから、悪くない生活だ。どころか、結構贅沢なんじゃないだろうか。
標高900mという場所なので夕方には肌寒くなってしまったが、帰りに近くの観光施設にある温泉に入って暖まることができる。特に期待していなくてふつうの大衆浴場に毛が生えたくらいかと思っていた「お亀の湯」というその温泉は、ぬめりの強いナトリウム炭酸泉で肌がツルツルになる。予想を大きく裏切る良泉だった。美人の湯として知られるらしいが、たしかに日本三大美人の湯と言われる和歌山の龍神温泉によく似た泉質。しかも、こちらの方が強い気がする。
施設内にはレストランもあり、何種類かの地ビールも楽しめるそうだから、夏にまた来てみたい場所だ(ビール飲めないけど)。


温泉で足の疲れもほぐれ、ほこほこと帰路に着く。
このところなかなか週末が充実しているのは、「ちょっとしたトレッキング+温泉」の組み合わせが功を奏しているのだろう。健康的だな!
そして、体育会系ではあるモノのバスケットと合気道、しかも職業は大学職員兼研究者という超インドア派の恋人が、私に付き合って高いところに登ったりするようになったのは大きな進歩だ。誕生日も近いことだし、プレゼントはアウトドアギアにしてさらに外に連れだすことにしよう。


今回の参考図書。

奈良散歩マップ

奈良散歩マップ

*1:神社付きの寺

神仏大習合!

子供の日を言祝ぐ猫



伊勢鳥羽で離島の宿に泊まって伊勢エビ丸かじりとか水族館でスナメリの鼻の穴を上から激写したりと充実したGWの始まりでしたが、最近新調したカメラで撮影した全てがメディアのエラーでパァになりました。うわーん!コンパクトフラッシュメモリのデータは消えても、私の心の記憶媒体からは消えないんだから!
しかし、タイやヒラメが舞い踊る舟盛りの夕食もキレイに平らげ、すっかりシーフード克服できた気がします(ウニ以外)。三十年以上もダメだったものでも、大丈夫になったりするんだね!人間は可能性を捨ててはダメなんだね!


伊勢市内はGW期間中パーク&ライド方式を採って、郊外の広大な運動公園に観光客を誘導、そこからバスでピストン輸送だったのですが、これが意外と良かったです。伊勢市内は神宮に向かう道がいつも混雑していてしかもわかりにくくなかなか手強い土地だったのに、自動車道から直接降りられる運動公園に車を止めてしまえばあとはバスで神宮まで運んでくれるのだから楽ちんなことこの上ないし、バスが満員になればすぐに出発するので本数が少ないと待たされることもない。地元の人たちや警察が入念に準備したのでしょう、誘導もスムーズでみんな親切でした。グッジョブ伊勢市!混みがちな観光地は、みんなこうした方が良いと思います。環境や地元住民への負担も少ないし。

肝心の伊勢神宮はといえば・・・なんかこう、寺社仏閣の相性みたいのが人によってあるのかもしれないけど、私はあんまり萌えないんだよなー。もっとこう、「まつろわぬ神」系の日陰っぽい神社が好きなのです。「神宮」とつくのはイマイチ。山麓の古社とかが良いです。
ってなんかパワースポットに群がるスピリッチャルな女みたいなこと言ってるけど誤解しないでください。どっちかというとオカルト&スピリッチャルなこと言いたがる人は苦手です。そっち系の人に好かれがちだけど、これといって「大自然エナジー」とか「霊的ナントカ」とか感じたりしませんし、実生活では超現実主義です私。


しかし、パワースポット巡りと思しき女性客多いですね。みんな神宮内の大木をうっとりと見上げたりさすったりしていますが、その巨木は何のメタファーだ(と下品な言いがかりをつけたがるくらいには苦手)。



さて、昨日は恋人と京都にお散歩に行ってきました。彼が京都に用事があったので、ついでだからとこんな本を購入しまして。他にもシリーズで奈良とか鎌倉とかあり、地図や見所、所要時間や高低差も記されているため、街歩きにとどまらずちょっとした登山のガイドにもなります。

京都散歩マップ

京都散歩マップ

北野天満宮に行ったことがなかったので、北野天満宮千本釈迦堂〜千本閻魔堂〜釘抜き地蔵〜晴明神社〜一条戻り橋〜京都御苑河原町という二時間ほどのコースを採用。なんだか図らずもまたパワースポット巡りみたいなことに。


しかし、北野天満宮はなかなか興味深い宮で、菅原道真(怨霊)を祀っていることから鳥居から社殿が一直線にならないスタイルを取っていたり*1、本殿の裏側に早良親王とかそうそうたる御霊の社が並んでいるなど、「怨霊の百貨店や〜」的なディテールがあちこちに散見され、ちょっとワキワキしてしまいました。もちろん、古くから学問の神様である道真公は人気の神様で、ずいぶん多くの参拝客(中には受験生と思しき男の子たちも)が訪れていました。

その後、千本釈迦堂を過ぎ(「おかめとひょっとこ」の「おかめ」さんはここが由来とはじめて知った)、マイフェイバリット天(天部の天ね)であるところの閻魔さんを本尊とする千本閻魔堂。偶然、GWにあわせて狂言が披露されていて、パントマイムのように進められる鬼と亡者の無言劇を楽しむことができました。珍しいモノを見られてラッキー。

右側に座っている閻魔様に、亡者が鬼の無体を訴えている。そして、男性の頭は邪魔。
すぐ近くに釘抜き地蔵のお堂もありのぞいてみると、なんだかこぢんまりしているものの密度が濃いというか、生々しい信心が強く向けられてきたのだなぁという感じ。巣鴨のとげ抜き地蔵が有名だけど、とげよりももっと痛い釘を抜いてくれるというお地蔵さん。本尊は本当に小さいのだけど、人がひっきりなしにやってきてはずいぶん長いこと祈っていました。釘を扱う大工さんの信仰も集めているのだとか。壁には、奉納された釘と釘抜きが並んでいました。


少し南下して、堀川通りに。堀川の柳が涼しげで気持ちいいです。西陣会館から溢れ出す韓国人観光客をかき分け、晴明神社へ。希代の陰陽師安倍晴明を祀った神社です。
社殿も境内も新しく整備され、都会の中の神社という感じ。そして、驚くほどたくさん人がいて、社殿の前に参拝待ちの行列が。他の神社みたいにお年寄りはいなくて、中高年以下の若年層がメイン。安倍晴明が主人公になった映画や漫画や小説の影響でしょうか。

そして、やはりいました。社殿前の神木であるクスノキに、目を閉じて頬を寄せる女性客。晴明が在りし日の鼓動を感じようとしているのかもしれませんが、樹齢はせいぜい二〜三百年程度と見受けられます。そして、連れの彼氏は若干引き気味です。そういうスピリッチャルな行為は、共感性の高い女友達とかとした方が良いと老婆心ながら思わずにはいられませんでした。

彼女がうっとりと頬擦りしていた巨木に激しく嫉妬。


パワースポットと言うわりには商魂たくましい感じで世俗テイストが強く、神社的には「その道では有名な観光地」くらいなものだったのですが、参拝客のギラギラした何かに当てられた感じでよろよろと出てきて、目の前に堀川一条の戻り橋。

晴明が式神を隠していたというエピソードが有名ですが、堀川は今ではすっかり整備され、子供たちが安全に水に触れられる公園になっていました。が、もしかしたら水と戯れていたあの子供たちが式神だったのかもしれません。

・・・なんて適当なオチをつけてみました。


あとはもう閑静な住宅地を歩いて京都御苑を突っ切り、河原町に出て恋人の用事を済ませ京阪に乗って帰ってきたのですが、久しぶりに行くと京都も良いものですね。ただ歩いていただけのようなモノですが、面白いネタがたくさん落ちている感じで飽きません。
盆地なので、五月とはいえ晴天の日は夏のような暑さでしたが、本当の夏ならこんなモノでは済みません。また、寒い時期も過剰に寒い土地です。新緑もきれいで、ちょうど良い時期だったように思います。


あまり明確な目的もなく、ふらりと街を歩いても楽しめる都です。またこんな風に訪れたいです。

*1:昔は道教の影響で、霊は直線にしか進めないと信じられていた。日本庭園などで見られる池にかかるジグザグした橋(八つ橋)なども、水辺に集まりやすいとされる悪霊除けとして造られている。