Crossing Water


空にかかる九夜月が、奇妙に明るく見える。
月の光が冴えると、気の早いことに、秋の気配の欠片のようなものを捉えてしまう。
夏はまだこれからなのに。


夜の水面と、光を落とす月と、風と、音。
夏の夜を構成するのは、そういう静かなものたち。


永らく失われたものたち。
それでも、懐かしむ程度には、近くなった。